赫眼ノ章 第3話


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(どうしたらええんや?!)

 兜とネジレバネの戦闘を横目に、カーキは次に取るべき行動を考える。

 傍には、青い顔をしたレモンがいる。

(今は何よりもレモンの安全を確保せな、やんな?!)

 カーキは、目の前で戦う兜の想いを汲み取る。

 幸い甲人族(セクト)の兵士たちは、現在の状況にどう対応するべきか決めあぐねているようだ。

「アリー!」

 カーキは地中に潜航させていた自慢の煉瓦人形(ブロックゴーレム)を呼び出し、王宮からの脱出を図る。

「リ…リィ?!」

 しかしアリーは、地中で何者かに妨害され、全身を浮上させることができない。

「アリー?」

 異変を察知したカーキは、アリーの浮上ポイントから距離を取る。

「リィィイイイイ!!」

 アリーが頂部を露出させた位置を中心として、地盤の砂地が摺鉢(すりばち)状に窪み、流砂を作る。

 アリーは全身を分解することで何とか流砂を脱出し、カーキの隣で再構築する。

 ガキィイイン!!

 間一髪、空となった流砂の中心で、巨大な鋏(ハサミ)が交差した。

「な、なんやあれは?!」

 流砂を覗き込もうと伸ばしたカーキの首を、中空から別の鋏が襲う。

「危ない!!」

 我を取り戻したレモンが察知し、蜂剣でその鋏を弾く。

「うぉ?!」

 地中と空中から迫る連携した二対の鋏…その戦法を見て、レモンは思い出す。

「ロイヤルガードの特殊部隊…ウスバとジゴクの陽炎(カゲロウ)姉弟ね!」

「うふふふ…正解〜」

 ゆらり、と蜃気楼から現れたように、姉のウスバが姿を現す。

「……」

 弟のジゴクは、蟻地獄の中心に潜り、再びその姿を消す。

「まぁ分かったところで、どうしようもないと思うけどね」

 そう言って、ウスバは不敵に中空でたたずむ。

 そのウスバに向けて、レモンが跳躍しようとする。

 しかし力を込めたその足元を、ジゴクが地中から崩す。

「くっ…!」

 流砂に足を取られたレモンに、一対の薄刃が迫る。

 レモンは身を捻って致命傷を避けるが、ウスバの刃は容赦無くその皮膚を裂く。

「レモン!!」

 血を流すレモンにカーキは駆け寄り、空中と地中に向けて、叫ぶ。

「何でや?! ロイヤルガードだってんなら…むしろレモンを守るのが筋なんと違うか?!」

「うふふ…蜂蜜のように甘い坊やね。私たちは強い者に従うの、身を守るためにね。黄王は確かに強かった…でも、死んじゃった。もっと強い王国を築いてくれるっていうんなら…ネジレバネでも何でも、つき従ってあげるわよ!」

 そう言うとウスバは再び姿を消し、今度はカーキの皮膚を裂く。

「ちぃ…!!」

 姉弟の連携に、二人はじわじわと体力を削られる。

 やがてレモンが、カーキに近寄り、耳打ちする。

(確かに厄介だけど…アタシとアンタの力を合わせれば、何とかなるわ。次にウスバが攻撃してきたら…)

「さよならの挨拶でも交わしたのかしら?」

 集まった二人をまとめて刺そうと、ウスバが双刃を携えて突撃してくる。

 呼応して、ジゴクが足場を崩す。

「アリー!!」

「リィ!!」

 しかしカーキは、レモンの足元に煉瓦で固定した即席の足場を出現させる。

「はァッ!!」

 頑強な足場を得たレモンは、下腿の筋肉を躍動させる。

 セクトを束ねる女王蜂の一族…その最大の武器は、爆発的な瞬発力を生み、何者をも踏みつける、発達した下肢筋であった。

「何?!」

 一瞬にしてウスバの頭上に跳躍したレモンは、蜂剣の柄で彼女の後頭部を打ち据える。

「がッ!!」

「?!」

 墜落する姉を見上げるジゴクを、今度は地中からアリーが締め上げる。

「……!」

 ブロックゴーレム渾身の羽交締めを受けて、ジゴクは無言で失神する。

「…やれやれ」

 陽炎姉弟の無力化に成功したレモンはぱんぱん、と手を叩き、高らかに告げた。

「強いヤツに従うってんなら…これで今からアンタ達は、アタシの下僕だから!!」

 取り巻くように戦況を見守っていたセクトの兵士たちは、新たな女王に向けて敬礼した。

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