白冬ノ章 第2話


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 ノ国の王城で、キキョウに預けた牙鳥貝(カラスガイ)がメッセージを運んでくる。

「紫ノ国に白の軍勢が侵攻中! リンドウも文句言いながら迎撃してるけど…旗色は悪いわ」

 続いてレモンが、カーキから届いた九鳥貝(ハトガイ)を置いて告げる。

「茶ノ国も同じ状況みたいね」

 そしてセレストも、付け加える。

「青ノ国もだよ」

 報告を受けたアイビィは、頭を抱えた。

「白が黒境じゃなくて世界を攻撃? 一体どうなっているの…」

 側で控えるベイルは、冷静に状況を補足する。

「厳密には、黒境も、そのほかの地も、かまわず攻撃しているみたいだな」

「所構わず…ならこの緑ノ国にも」

 アイビィがそう口にしたとき、クロムは白の気配を察知した。

(!!…モノ)

(ああ…来るぞ!)

 王城の天蓋を裂き、白皇プラチナが現れる。

 しかしその険しい目つきはアイビィを捉え、やがて切なそうな視線に変わる。

「…帰ろう、在るべき場所に。還そう、在るべき世界に」

 そしてプラチナは、アイビィを抱きしめるように、両の白翼を優しく広げる。

「お母さん…?」

 アイビィは、見たことのない母の面影をプラチナに見る。

 惚(ほう)けたようにプラチナの元へ誘われていくアイビィを、その腕を引いてクロムが止める。

 その行為を見て、プラチナはクロムを敵と定める。

「…邪魔をするな、穢れた混色が!!」

 プラチナの目に険が戻り、慈しむ掌のようだった両の羽根は、剣山のように逆立った。

(まずいっ!!)

 プラチナの両翼から無数の白光が、散弾のように射出される。

「くっ…!!」

 アイビィたちの前にベイルが、さらにその前にセレストが立ちはだかり、光刃を受ける。

「…防ぎ、きれない?」

 白は本来、優しい色だ。

 他色を薄めることはあっても、上塗りすることは殆どない。

 しかしプラチナが放つ白には、黒だけではない、あらゆる色を…消し去ろうという鋭い意志が宿っていた。

 白き刃は、セレストの盾と鎧を穿ち、ベイルの身を斬り裂いた。

「そこぉッ!!」

 その背後からレモンが飛び出し、攻撃後の隙を突こうと素早い動きで接近する。

「…ふん」

 しかしプラチナは、まるで羽虫を払うが如く、左翼を振るって弾き飛ばす。

「きゃあっ?!!」

 吹き飛ばされてきたレモンを、クロムは受け止める。そして、額当てを外す。

(いいな、モノ?)

(ああ…ここは、やるしかねぇだろ!!)

「はぁぁあああああああ!!!!」

 クロムの額で、第三の眼が見開かれる。

 そして、白の襲撃で散り散りとなった世界中の黒境が、黒が、クロムの元へ集まっていく。

「…いいだろう。今度こそ、跡形もなく浄化してやる!!」

 黒皇モノクローム…その姿を見てプラチナは、白剣を構えて飛翔する。

「この前のようにはいかない!!」

 意志を持って、黒を纏って、モノクロームはプラチナに相まみえる。

「オォォォオオオオオオオ!!!!」

 再び繰り広げられる白と黒の激突…上空では、黒雲に白雷が響き渡る。

 前回は、加減をしたプラチナが終始主導権を握っていた。

 しかし此度は、プラチナにその余裕はない。

 互角の戦いを繰り広げる両者だったが、その胸中は同じではない。

(なぜだ? なぜ、黒を滅することができない?!)

 最強の白であるプラチナにとって、他色はまだしも、黒に遅れをとることは許されない。

 その孤高の自負と誇りが、焦りによって翳(かげ)っていく。

(いけるぞ! だが…油断はするな!!)

(分かっているさ!!)

 対して、モノクローム…モノとクロムは互いに気持ちを支えながら、湧き上がる数多の想いを乗せて、力を収斂(しゅうれん)させていく。

「私は…!」

「俺は…!!」

 最後の交錯の刹那、奇しくも両者の視界に、同じ人物の表情が映る。

 そしてその勝敗を分けたのは、彼女に対する想いの質の違いだった。

 守り、庇護しようとする想いと、共に、歩んで行こうとする想い…

 パキィィイイイン!!

 黒爪が、白翼を貫いた。

「馬鹿、な…」

 揚力を失い、プラチナは落下する。

 そして、温かな、緑白の光に受け止められる。

「リリィ…?」

 プラチナを受け止めたのは、妹リリィ…その色を、想いを、受け継いだ一人の少女だった。

(どう? この世界には思いもよらない…色々な可能性で溢れているでしょ?)

 プラチナの心は確かに…懐かしい、イタズラめいた声を拾った。

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