白冬ノ章 第1話


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「国のために王が在るか、王のために国が在るか?」

 収穫祭から帰還したガネットの質問に、赤王は耳を傾ける。

「そうなんだ。オレにはよく分かんなかったけど、親父ならどうかなって!」

(成程…)

 子ども扱いしていた娘の思わぬ成長振りに、バーミリオンはふと、持論を語りたくなる。

「紫王も緑王も分かっておらぬ。王とは、国そのものなのだ。王とともに国は在り、国とともに王は在る。ゆえに、国のために王は血を流し、王のために国は血を捧げねばならぬ」

 ガネットは首を傾け、腕を組む。

「むー…やっぱりオレにはよく分かんねぇな」

 その様子を見て、バーミリオンは破顔する。

「ふ…だがそれもまた、考え方の1つに過ぎぬ。お前はお前なりの、王道を考えていけば良い」

「分かったぜ!」

 ガネットは、分からないことが分かった、というような、スッキリとした顔で笑った。

 バーミリオンは、苦笑しながら話を変える。

「ところでガネットよ、収穫祭は大変だったそうだな。仔細はシルビアから聞いている」

 ガネットは少し感化されたようだが、赤王にとって当初の目論見は変わらない。

(この世界から黒境を無くす。そのためには、単一色による統一が必要だ)

「収穫祭の不手際で、賓客(ひんきゃく)たる我が王女の命を危険にさらした罪…これを口実に、一気に緑ノ国を攻め滅ぼす」

 そう宣言すると赤王は、その身に炎を滾(たぎ)らせる。

 丁度その時、壮観な白翼の軍勢を従えて、プラチナが姿を現した。

「おお、良き頃合だ、プラチナよ。約束通り、これから赤に染まる世界を見せてやろう!!」

 赤王は、プラチナの帰国を歓迎するように両の手を広げる。

 しかしプラチナはその手を取らず、白翼を広げ突き放す。

「勘違いするな。これより私が行うのは、白き世界への修正だ」

 それを合図に配下の白たちは、一斉に赤ノ国へと襲いかかる。

 白たちは、黒境も、国土も、分け隔てなく漂白していく。

「貴様…我との約定を違えるか!!」

 赤王は、憤怒の炎に身を包む。

「…約定、か」

 プラチナは赤王に背を向け、飛び去る。

(私が果たせなかった…果たすべきだった約束は、今も昔も、1つだけだ)

 * * * *

「お姉ちゃん。この世界には…もっと色々な可能性があると思うんだ」

 プラチナの記憶の中で、リリィはきらきらと笑っている。

「…可能性?」

 かつてのプラチナは、少しうんざりしたように問い返す。

「うん。白だからこう、黒だからこう…そういうんじゃなくて、なんていうのかな、一人ひとりに、いろいろな色があると思うんだよね」

「…相変わらず、お前は難しく考えすぎだ」

 白は黒を浄化するために遣わされた。だが黒境を弱めれば、また色人達は互いに争い、黒を生み出す。そして、白を頼る。その繰り返し。

 プラチナをはじめ、白たちは色人の愚かさに辟易(へきえき)とし、白皇山に閉じこもった。

「お姉ちゃんたちが考えなさ過ぎなんだよ。ただ与えられた役目をこなすのも、嫌気がさして何もしないのも…私に言わせれば、どっちも思考停止だよ」

「……」

 プラチナは、しばし黙考する。

「だから、私は山を降りて世界を見てくる。止めないでね、お姉ちゃん!」

 そう言うと、リリィは白翼を広げ飛び立とうとする。

「お、おい待て! 外の世界は…白を取り込もうとする愚かさと悪意で溢れているぞ?!」

 急な展開にプラチナは焦り、止めようとする。

「だからそれを、確かめに行くんじゃない」

 リリィは肩をすくめて返事をする。

 そして、イタズラっぽく微笑みかける。

「でも本当に世界が愚かで危険だったら…お姉ちゃんが助けに来てね♪」

「…分かった。約束だ」

 プラチナはいつも、この時より前の世界に還りたいと願っている。

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