傷ついたキャンバスの穴を埋めるように、空から白が舞い降りる。
緑白の光に誘われたのは、世界を修正する白ではなく、世界を修復する無垢なる白…おだんごうおだ。
「止まった…のか?」
そしてそれに呼応するように、プラチナが世界に放った白翼の軍勢も動きを止める。
プラチナはゆっくりと辺りを見渡す。
かつて見た、白とともにある緑の光…
そして今、その周りには、黄、青、黒…たくさんの色が輝いている。
「誰かのための色ではなく、誰かとともにある色、か…」
プラチナはゆっくりと起き上がる。
「?!」
一同はにわかに警戒する。
しかし、不要だ、というように、プラチナは片手を上げて彼らを制する。
「成程。リリィの言った、この世界にある色々な可能性…その存在については認めよう」
「……」
「だから、今一度委ねることにする。アイビィ…リリィの色を、意思を継ぐ者よ。お前がこの世界とともに生きようとするならば、私はそれを見守ろう」
「プラチナさん…」
「だがもしも、やはりお前がこの世界は愚かで危険だと思ったのなら…私を喚ぶが良い。その時こそ、私は全身全霊を持って、この世界を白紙に還すと約束しよう」
「……」
アイビィは、プラチナの視線に決意と慈しみの光を見る。
「だからそれまではこの勝負…預けておくぞ!」
そう言ってプラチナは、モノクロームを一瞥して引き上げる。
追従するように、彼女が率いた白翼たちも退いていく。
(…あいつ、この期に及んで負けを認めない気か?!)
クロムの額でモノが茶化す。
(いやでも実際…これ以上続けられていたら俺たちの負けだよ)
もう指一本動かす気力もないクロムは、黒装を解き、倒れ込む。
そんなクロムのもとに、アイビィが駆け寄る。
「良かった…。もう、無茶しないでよ!」
「ごめん…」
そう軽く答えようとしてアイビィの顔を見上げたクロムは、そこに大粒の涙を認めて慌てる。
「ホントだよ! クロムに万が一のことがあったら、私…」
「……」
クロムは不意に思い出す。
兄、であった自分に連れまわされては、ケガをしていた泣き虫アイビィ…
だからアイビィを傷つけまいとして、泣かせまいとして、黒の力に呑まれた自分は距離をとり、離れたつもりだった。
けれどアイビィをいちばん傷つけていたのは、そんな自分だったとしたら?
「ごめん…」
だからクロムは繰り返す。同じ…だが、重い言葉を。
その変化に気づき、アイビィは問う。
「ごめんって…なにが?」
「それは…」
口を閉ざすクロムに、アイビィはイタズラっぽく問い詰める。
「そういえばプラチナさんと戦っているときに、こっちを向いて『俺は…!!』って言ってたよね? あの続き…聞いてみたいなぁ」
「……」
涙を拭きながら、アイビィは笑う。
クロムにしてみればそれは、最高にズルい笑顔だった。
「俺は…アイビィと共に、歩んで生きたいんだ、って…」
「兄として?」
アイビィは、みなまで言わなくても…を許さない。
「…パートナーとして」
クロムは真っ赤になってそう答える。
「ふーん…」
そんなクロムの瞳を、アイビィは満足そうに見つめ返す。
「私もっ!!」
そして満面の笑みで、抱きついた。
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